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少女「水溜まりの校庭でつかまえて」

少女「水溜まりの校庭でつかまえて」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 11:48:15.28 ID:fJ2jl6pYO
小学校のチャイムが鳴る。

放課後の掃除と帰りの会が終わり、あとは家に向かうだけ。

僕(雨が降りそう……)

窓の向こうには、灰色の雲。

早く帰ろうと、ランドセルを背負って教室を出ようとしたその時……背中から声をかけられた。

女「ねえ僕ちゃん」

僕「ひ……っ!」

女「そんなにビックリしないでよ。声が裏返っちゃって、あははっ」

僕「い、いきなり声をかけるから……」



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 11:50:19.54 ID:DEzQeHaX0
期待してます。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 11:56:05.08 ID:fJ2jl6pYO
女「ふふっ、そんなに怖がりなら誘わない方がよかったかな〜?」

僕「……何のこと?」

女「今から学校の中を探検しようって、友達と話していたの」

僕「探検って?」

女「あ、ただの探検じゃないよ。学校で噂されてる、七不思議を調べるんだよ!」

僕「七不思議……」

いくつか話は聞いた事がある。

が、僕はオカルトや怖い話が特別好きというわけではなかったので、話の内容までは覚えていない。

僕「ええっと、七不思議ってどんなのだっけ?」

女「んん〜と……私が聞いたのは」



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:04:39.91 ID:fJ2jl6pYO
女「校庭にある二宮金次郎像の薪の数が変わるとか……」

「え〜、私は薪の数を数えると呪われるって聞いたよ?」

「首の向きが変わるって聞いたけど……」

後ろで待機していたクラスメイトが、話に割って入ってきた。

「いや! 俺は金次郎の像が夜中に走り出すって聞いたぞ!」

大きな声が教室に響く。

クラスで一番やんちゃなガキ大将……イメージ的にはピッタリだ。

僕(……こういう話が好きだったんだ)

体も声も大きい彼が、こういう話を楽しそうに語っている姿は意外だった。

女「ね……もう四つくらい不思議が出ちゃってるんだよ」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:13:32.35 ID:fJ2jl6pYO
僕「四つって、金次郎さんだけで?」

女「不思議でしょ?」

僕「う〜ん……」

女「他にもね、美術室の床に人の血が滴り落ちてるとか」

「誰もいない図書室で、勝手に本棚が動くとか」

「そうそう、家庭科室で包丁が無くなる事件とか……」

「お、俺も校庭で変な声を聞いたぞ!」

大将は、いちいち声がでかい。

女「ね、七不思議を一緒に調べない? 事件を解決して、学級新聞に書きたいんだよ〜」

僕「そう言えば女たちの班が係りだっけか?」

女「うん!」



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:19:01.61 ID:fJ2jl6pYO
女「だから一緒に調べようよ〜、ね? ね?」

僕「僕は班が違うけどいいの?」

女「……だって班のみんな帰っちゃうんだもん。怖い話や〜、って」

僕「……その新聞、本当に作れるの?」

女「みんな書くスペースは決まってるから、その点は大丈夫だよ」

僕「女一人で七不思議を調べたりはしないの?」

女「ひ、一人で学校歩くのはち、ちょっと……」

僕「怖いんだ?」

女「怖くなんかないですよ〜だ!」



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:24:07.28 ID:fJ2jl6pYO
僕「ふう〜ん」

女「あ、あんまりニヤニヤするならもう誘ってあげない……!」

「そうだな! 俺たちだけで十分だよ!」

「ええ〜、それもつまんないよ〜」

「いいじゃんいいじゃん」

女「い、いいの? 本当にもう僕ちゃん誘ってあげないよ!」

女の顔が、キッとこちらを向いた。

半分は泣きそうで……もう半分は、ただ友達と遊びたい、そんな顔をしてるように見えた。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:24:54.52 ID:iXcxRn7jO
「小学校でつかまえて」しか見たことないな
結局どうなったのあれ



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:30:18.15 ID:fJ2jl6pYO
僕も、女の事は嫌いなわけじゃない。

本当に誘われなくなっても困る。

僕は、内心焦りながらも返事をした。

僕「で、でもさ学校を探検するのも面白いかもね〜」

声が上ずっている。

女「ぼ、僕ちゃんも……来る?」

僕「え、えっと、まずは何から調べるの。雨が降りそうだから、早く終わらせて帰ろうよ」

女「……えへへっ、じゃあまずはね……」

僕は、あえて「行く」という返事をしなかった。



13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:36:31.30 ID:fJ2jl6pYO
女「順番はね、私たち三年生の教室から近い順に見ていこうかなって思ってるの」

「そうだな! じゃあ最初は美術室だな!」

女「僕ちゃんもカバンなんて置いてさ、一緒に行こうよ」

僕「う、うん……」

その一言だけで、僕の顔は恥ずかしさで真っ赤になってしまった。



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:40:33.34 ID:fJ2jl6pYO
僕(……女と、一緒に学校を歩いてるんだ)

女「ほ、本当に血があったらどうしようね〜」

「大丈夫だよ! 俺がみんなを守るから!」

女「僕ちゃんは、血とか大丈夫?」

僕(なにが、大丈夫なんだろう……?)

女「……ふふっ」

僕(やっぱり、こう見ると女って……可愛い)

ちょっと気になっていた、クラスの可愛い子と……放課後の学校を歩く。

薄暗い廊下は、しんとしていて……僕たち以外は誰もいないような錯覚をする。

静かだ。



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:43:20.34 ID:afBSrIrZO
なんじゃこりゃあああっっ


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:44:55.33 ID:fJ2jl6pYO
女「じゃあ、行くよ」

美術室の扉が音を立てて開く。

中に入った瞬間、絵の具や画板などの木や塗料の匂いが僕たちに強く襲いかかる。

僕(う……)

僕はこの匂いが苦手だった。

女「じゃあ、早速調べよう。手分けして、何かあったら教えてね」

「お〜」

他のみんなは平気なようだった。

僕だけが頭を痛くしながら、適当に教室内の床を見て歩いていた。

床には……変わった所は何もない。



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:51:29.54 ID:fJ2jl6pYO
「う、うわああああっ!」

突然、教室の後ろの方で叫び声がした。

男友達が悲鳴をあげて、床を指差していた。

女「ど、どうしたの!」

「こ、こ、これ……ち、血……」

教室内に散っていたメンバーが、一斉に集る。

「うわあっ!」

「いやあっ!」

床を見ると、確かにそこには染みが出来ている。

赤々とした、大きな染みだ。

……しかしそれは不自然なくらいに赤い。

女「あれ、これって……」



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 12:57:17.56 ID:fJ2jl6pYO
女が、その赤を爪で剥がそうと床に手をついた。

「お、女ちゃん……だ、大丈夫?」

女「うん。だってこれ血じゃないもの」

「……え」

女「血だったらこんなにテカテカしてないよ。固まってる感じからして……絵の具じゃないかな?」

「絵の具〜?」

大将が、胡散臭げにその染みを見ている。

女「そうだよ。ほら、ここの棚に絵の具缶もあるしさ。きっと中身がこぼれて固まっちゃったんだよ」

「な、なんだ驚いて損しちゃった」

「女ちゃんすごい〜」

女「えへへっ」

僕(心の中じゃあ、僕のが先に気付いていたのに……)



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:05:57.65 ID:fJ2jl6pYO
女「あれが美術室の噂かなあ」

廊下は静かで、女の声だけが響き渡る。

僕「七不思議なんて、あんなもんだよ」

女「まだ調べる場所はたくさんあるよ! 図書室に音楽室……あ、体育館の噂もあってね……」

クラスメイトと放課後の学校を歩く……昼とはまた違って見える教室の景色。

誰もいない廊下、普段にもまして余計に寂しく見える理科室や音楽室。

そんな光景も、友達と一緒にいれば何も怖くなかった。

ただ学校の中を歩き回っているだけなのに、僕は今とてもワクワクしている。




20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:17:22.85 ID:fJ2jl6pYO
女「……結局、他の教室でも何もなかったね」

放課後の探検を終え、僕たちは教室に戻ってきていた。

みんながカバンを背負って帰る支度をしている。

僕も先ほど放り出したままのカバンを持ち、教室を出た。

「今日は何も発見がなかったね」

「あ〜、でも結構ドキドキしたよね」

女「次は体育館の鍵とか借りて、中を調べないとね」

僕「えっ、まだ調べるの?」

女「当たり前でしょ? 七不思議の噂をちゃんと調べて新聞にするんだから」




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:24:41.28 ID:fJ2jl6pYO
僕「はあ……まあみんなが行くなら僕も行くよ」

女「もう、またそんな天の邪鬼な事言う!」

僕「だ、だって七不思議なんて……本当にあるわけ……」

女「そんな事言うなら誘ってあげない! ふんっ!」

階段を勢いよく降りる彼女……踊り場を抜けてあっという間に一階まで行ってしまう。

「あ、待って待って〜」

「俺もいく〜」

女に続くように、友人たちも階段を駆け降りてしまう。

僕「ち、ちょっと! ま、待ってよ!」

暗い階段に、僕の声だけが響いた。

僕も急いでみんなを追いかける。



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:32:14.38 ID:fJ2jl6pYO
僕「はあ、はあ……」

女「ふんだ、置いてっちゃうからね〜だ」

玄関に着いた彼女たちは、すでに靴をはきかえて外に出られる状態だった。

その姿を見るだけで、僕は焦った。

僕「ま、待ってよ。置いてっちゃ嫌だよ」

玄関と廊下の境界線が、とても遠くに感じる。

口では強がっていてもやはり恐怖心はある。

急いで靴をはこうと、走り出した。

その瞬間……。

「……なあ」

今まで静かだった大将が、僕の方を見つめて話しかけてきた。

「七不思議の事だけどさ、俺一度だけ体験をした事があるんだ」

いきなり……何を言い出すんだ。



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:38:57.92 ID:fJ2jl6pYO
女「え、体験したの?」

女は興奮した様子で話に食いついた。

大将は淡々とした様子で語り出した。

「うん。三年生になって……夏休みに入る前かな、雨が降った日があってさ」

「俺、宿題のプリントを学校に忘れちゃってさ。気付いたのが一度家に帰ってからだったんだ」

「ちょうど今くらいの時間かな。まだ夏だから暗くはなかったけど、それでも一人で学校を歩くのは不気味でさ」



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:47:27.29 ID:fJ2jl6pYO
女「ま、まさか教室に幽霊が出たとか?」

「……プリントを持って、学校から出たんだ。ここまでは何もなかったよ」

女「学校から出たって事は……もしかして金次郎さんが動いたりとか!?」

「違うよ。普通に玄関前の階段を降りて、校庭を歩いていたよ」

僕「……それから?」

「雨でグシャグシャの校庭を歩いていると……いきなり女の子の声がしたんだ」

女「声?」


『……こんにちは、今から帰るの?』



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:54:31.23 ID:fJ2jl6pYO
僕「女の子の……声?」

女「誰かに声をかけられたの?」

「うん。でも、周りを見渡しても誰もいないんだよ……広い校庭には俺だけ、他に誰もいない」

僕「だ、誰か玄関で話していたとかでしょ?」

「玄関からは離れた場所だよ、校庭の……どの辺かは忘れたけど、真ん中あたり」

女「それ……本当?」

「嘘じゃないよ。怖くて調べてはないけど……声は聞いたよ」



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 13:59:03.53 ID:fJ2jl6pYO
僕「そ、そうなんだ……」

その話を聞いて、僕はなんだか怖くなってしまった。

噂だけならともかく、実際にそんな体験をした人が周りにいるとなると……

「ん? どうした、怖いのか?」

僕「ち、ちょっとだけ……」

正直に僕は答えた。

足がプルプルと震えている。

「……っ、ぷ……」

僕「?」

「ふ、あはははっ、そんなに怖がるなよ! 嘘に決まってるだろ、こんな話!」

僕「な……」

さっきとは変わって、玄関中に響く声で笑い出した大将。

「あ、足なんか震わせちゃって、ふ、ふふふっ……」

これ以上ないくらいに、笑っている。



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:05:09.18 ID:fJ2jl6pYO
僕「ま、まあ嘘なら嘘でもいいんだけどさ……」

「……ところでさ、机に筆箱を置きっぱなしじゃないかい、僕くん」

僕「え?」

「ほら、お気に入りのあの青い筆箱だよ。みんなに自慢してただろう?」

カバンを漁ってみると、確かに筆箱だけが入っていなかった。

ゴタゴタの中でしまい忘れたのか。

僕(う、うう、あれが無いとなんか不安……)

僕「と、取ってくる!」

「あっそ。じゃあ俺たちは帰るから。一人で頑張れよ!」

僕「……え? 誰もついてきてくれないの?」



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:10:26.19 ID:fJ2jl6pYO
女「教室くらいすぐだよ〜。僕ちゃんなら一人で大丈夫だよね?」

僕「う……」

女にそう言われたら、カッコつけないわけにはいかない。

僕「じ、じゃあちょっと行ってくるよ……」

「おう。じゃあまた明日な〜」

僕「せ、せめてここで待っててよ!」

「え、僕くんだけ帰る方向違うじゃん。だからここでバイバイするんだよ」

僕「そ、そんな……」

チラッと女の方を見てみる。

女「……あ、もうアニメが始まっちゃう」

一人玄関を出ていく彼女。

女「じゃあ、バイバイ〜」



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:17:24.42 ID:fJ2jl6pYO
僕「うう……」

結局、僕は一人で廊下と階段を引き返し……二階の教室まで歩いていた。

廊下は更に暗くなり、もう一番奥の方は見えなくなっている。

僕「早く帰らないと……」

三年生の教室に入り、電気をつける。

真っ白い光が教室を照らす。

僕「ああ、あった」

机の上には青い筆箱。

僕はそれを取るとカバンにしまい、しっかりと閉じた。

僕「……もうこんな時間」

黒板の上に設置してある時計を見た後、僕は窓の方へ目を向けた。



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:24:16.36 ID:fJ2jl6pYO
暗い空、そして……。

僕「あ、雨……」

いつの間にか降りだしていたのか、外では雨が力強く降っていた。

季節外れの夕立だろうか、すごい勢いで窓を叩いている雨水が印象的だ。

僕「……あ、女たちだ」

窓の向こう、教室から見える道では傘が四つ並んで歩いていた。

両脇に田んぼと畑が広がる、一本の道を早足で歩いていく。

僕(本当に、帰ってるや……)

僕も早く帰ろう。

そう思って教室の入り口に向かった瞬間……。

背中から、視線を感じた。



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:28:38.13 ID:fJ2jl6pYO
ビタッ、と。

入り口付近で固まってしまう。

明らかに、後ろに誰かがいる……ような気がした。

僕には霊感なんてないし、特別にオカルトが好きというわけではない。

それでも、背中から……教室の中か窓の向こう、ベランダから……視線を感じてしまった。

僕「……っ!」

僕は後ろを振り返らずに、一目散に教室から出ていった。

廊下を走り、階段を降りて……ようやく一階の玄関までたどり着いた。



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:34:45.82 ID:fJ2jl6pYO
僕(怖くない、怖くない!)

置き傘を探しながら、僕は心の中で必死に叫んでいた。

……やっと傘を見つけ、学校を飛び出した時は正直ホッとした。

暗く、閉鎖的な空間よりはよっぽど居心地がいい。

僕(早く、帰ろう……)

玄関前の階段を降りて校庭へ。

急な雨で地面はグシャグシャ、ちょっと歩いただけですぐに靴下まで濡れてしまった。



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:39:43.11 ID:fJ2jl6pYO
僕「うへえ……嫌だ嫌だ」

僕「……まあ、帰ればコタツとストーブで暖まって、あ、お風呂もいいよなあ」

体は冷たいながらも、僕は帰った時の事を想像して内心はウキウキしながら歩いていた。

雨はそんなに嫌いじゃない。

何より、寒い体を暖めてノンビリする……僕はそれが好きだった。

僕「今日の夕ご飯はなにかな〜」

そんな……ゆっくりとした気持ちで校庭を歩いていた。

彼女の声が聞こえてくるまでは。


『……わ』

僕「……え?」

聞こえた何かに、耳を傾けてみる。

『……』



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:43:47.36 ID:fJ2jl6pYO
なんだ、気のせいか……。

辺りを見回しても誰もいない。

もう一歩を踏み出そうとした瞬間……。

『……こんにちは、今から帰るの?』

僕「!」

今度ははっきりと聞こえた。

か細く、弱々しい声だけれども……雨音にかき消される事なく、はっきりと僕の耳に届いた。

『……ねえ、今から帰るの? 少し私とお話しない?』



36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:48:31.84 ID:fJ2jl6pYO
お話……?

僕(ま、待ってよ、足がすくんで……喉も)

『ふふっ、そんなに怖がらなくていいのに。私、何も悪い事しないよ』

僕「あ、あ……」

ダメだ、校庭の真ん中で僕は立ち尽くしてしまった。

足が氷のように動かない。

靴下が水浸しでも、もう関係ない。



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:53:19.75 ID:fJ2jl6pYO
『そんなに……怖がらないでよ……ただ、お話したい……』

『それだけ、なのに』

僕「……?」

よく声を聞いてみると、確かに不思議な感じがした。

姿は見えないけれど、ただそれだけ。

『ねえ、お願いだから』

その声からは、純粋に僕と話したい……そんな印象しか受けなかった。

僕「き、君はだ、だれ?」

震えながらも精一杯に声を絞り出した。

ちゃんと聞こえてくれただろうか?

『! 私、私はね……!』



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 14:59:31.46 ID:fJ2jl6pYO
『私は……ただお話したいだけだよ』

興奮から一呼吸置いた後、落ち着いた返事がきた。

僕「え、えっと……怖くないよね?」

僕はまだ、落ち着けていないようだった。

『怖くないよ。ちょっと声かけたら、みんな逃げちゃうんだもん……もう、寂しいよ……』

僕「み、みんなって?」

『この学校の人。私がお話しても、誰も答えてくれなかったから……』

僕「は、話がわからないんだけど」




39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:04:01.97 ID:fJ2jl6pYO
『ねえ、私と一緒にお話してくれる?』

どこからともなく声がしている。

悪意はなくても、気持ちのいい事ではない。

僕は思いきって提案をしてみた。

僕「……す、姿を見せてくれればいいよ」

『姿も何も、私はずっとここにいるよ』

僕「え? どこに?」

辺りを探しても、ただ校庭に雨が降っているだけ。

女の子の姿は見当たらない。

『もう、違うよ。そんな周りじゃなくて……教室のベランダ』

僕「ベランダ……?」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:08:19.52 ID:fJ2jl6pYO
『うん、電気つけっぱなしの三年生の教室だよ』

僕「あ……」

どうやら学校から出る事に夢中で、教室の電気を消し忘れてしまったらしい。

二階では一つだけ、電気のついた三年生の教室が目立っている。

そのベランダを見てみると……。

僕「……いないよ」

『……』

僕「そんな嘘はいいからさ、早く姿を見せてよ」

話せる分だけ、僕も少し強気になっていた。

『う、嘘じゃないよ……私、ずっとずっとここにいたんだもん……』

女の子の声が、少し泣き出しそうになっていた。



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:14:34.72 ID:fJ2jl6pYO
僕「で、でも実際姿見えないよ? なにか証拠でもないと信じられな……」

『さっき、帰る前に女ちゃんに呼び止められて学校探検してた』

僕「な、なんでそれを知って……」

『ずっといるんだから、わかるよ。君の名前も、今日の給食のメニューも』

僕「で、でもそれだけなら……」

『……青い筆箱、机に忘れてた』

僕「!」

『窓から外見て、帰る友達見ていた』

僕「そ、それはさっきの」

『ずっと見てたもん、私にはわかるんだもん』

『ここに……ずっといるんだもん』

ヤバい、さらに泣き出しそうなくらい弱い声になっている。



42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:20:22.64 ID:fJ2jl6pYO
僕「姿を現す事はできないの?」

『知らない、そんなの。私はここにいるんだもん』

僕「うう〜ん……」

こっちからすると、姿が見えないのは不安で仕方がない。

『お話……』

いくら声が聞こえるから……って?

声が聞こえる?

僕「あ、あのさ」

『ん〜』

僕「君は、今どこにいるの?」

『ベランダだよ〜……三年生の教室の』

僕「じゃあ……どうして君の声が僕に聞こえるの?」

『え?』



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:26:08.49 ID:fJ2jl6pYO
僕「だって僕、校庭の真ん中……ううん、校舎から見れば奥の方にいるんだよ?」

『うん、見えてるよ〜』

僕「普通はこんな声なんて聞こえないよ、雨だって降っているのに」

『……でも、声が届いた人はみんなその辺にいたもん。話したいな〜って声かけたら聞こえたんだもん』

僕「この辺に?」

周りを見てみるけれども……この辺りには遊具なんて何もない。

ただ景色が開けている、普通の校庭の一部でしかない。



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:33:16.25 ID:fJ2jl6pYO
僕「……」

雨は相変わらず、強く降っている。

校庭の土を叩いては、いくつもの水溜まりを作って……。

僕(あ、水溜まりが光ってる)

目の前の先……数歩分くらいの距離にある水溜まりが、なぜか白い光を放っていた。

しかし、それは何も不思議な光ではなかった。

僕(……ああ、教室の電気か)

水溜まりの中に、僕が消し忘れた教室の光が反射している。

僕は、その水溜まりをボーッと見つめていた。



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:38:08.99 ID:fJ2jl6pYO
『……』

僕(……あ)

白い光のある場所には、当然教室とベランダが映っている。

僕(だって、あれ?)

顔を上げて、実際の教室の方を見てみる。

僕(……いない)

再び、水溜まりの光に目をやると……白い光が素直に僕の目に入ってこない。

どうしても、光の前に一つだけ影が入ってしまっている。

それは、小さな女の子の影のように見えた。

彼女は、ベランダの手すりに頬っぺたをくっつけ突っ伏していた。



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:45:18.36 ID:fJ2jl6pYO
僕「ねえ、今手すりにくっついてる?」

『え? う、うん。一応』

言葉と一緒に、水溜まりの中の影が顔を起こしたように見えた。

僕は少し興奮しながら、また彼女に話しかけた。

僕「あ、今体まっすぐにしたでしょ?」

『……見えるの?』

僕「見えるよ、教室のベランダにいる。真っ白いワンピース着てて……」

雨はもうそんなに強く降っていない。

水面に反射したベランダ……水溜まりの中に、僕は彼女を見つける事が出来た。


僕が本当の不思議に出会った瞬間だった。



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:52:40.92 ID:fJ2jl6pYO
パッ。

僕「あ……」

僕が彼女を見つけた瞬間、教室の電気が消されてしまった。

『先生来て、消されちゃったよ』

僕「そっか、まあ当たり前かな」

『もう私見えない?』

僕「……いや、見えるよ」

光がなくなっても、水溜まりの中に彼女はいた。

僕「まだ一階職員室の明かりがついているから、余裕だよ」

『ふふっ、よかった』

笑う彼女の声を聞いて、なんだか僕まで嬉しくなってしまった。





50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:53:17.62 ID:wDPipLSS0
このスレだけは保守するぜ


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 15:57:28.61 ID:fJ2jl6pYO
光が無くても、ベランダにいる彼女はよく見えた。

僕(水溜まりがこんなに映像を反射するものだとは思わなかったな……)

『えへへっ、なんとなくわかったよ』

僕「ん? 何?」

『その水溜まり……私が映ってる距離と僕ちゃんがいる距離は近いでしょ?』

いつの間にか、名前で呼ばれてしまっている。

『だから、お話できるんだよ。私って天才〜』

僕「……ぷ、ふふっ」


『な、なによ。何かおかしい事言った〜?』

僕「い、いや、ずいぶんお茶目な性格なんだな〜って、くくっ」



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:03:40.64 ID:fJ2jl6pYO
僕「さっき話しかけられた時は怖かったけど……」

『悪いことなんてしないって言ってるのに……』

僕「姿が見えなかったからね。今はちゃんと……あ、今髪の毛いじったでしょ」

『っ! べ、別に女の子だからいいんだもん! 悪い!?』

僕「わ、悪いなんて言ってないよ。ちゃんと見えてるんだからさ……ほら、お話しようよ」

『……』

僕「あれ、ダメ?」

『……もう、お家帰る時間でしょ』

彼女がそう言うと.学校のチャイムが校庭に鳴り響いた。

僕「こんな時間にチャイムが鳴るんだ」

『これが最後のチャイムだよ。冬はみんな早く帰っちゃうから……』



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:08:29.46 ID:fJ2jl6pYO
空もすっかり暗くなっている。

職員室の明かりだけが、弱々しく学校に一つだけ灯っている。

僕「僕もそろそろ帰らないと」

『うん……今日はありがとう』

僕「また会えるよね?」

『私はずっとここにいるよ。授業中も、給食の時間も、放課後も……』

僕「あ、そっか、じゃあいつでも会えるんだね」

僕は少しだけ嬉し楽しい気分になった。



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:12:08.82 ID:fJ2jl6pYO
『……どうだろうね』

僕「?」

彼女の声は、どこか沈んでいるように思えた。

僕「あ、あのさ……」

僕が話しかけた瞬間、職員室の明かりが消えた。

僕「あ……」

『また今度会えたらいいね、バイバイ僕ちゃん』

僕「ねえ……ねえ」

『……』

水溜まりに言葉を投げ掛けても、もう返事は来なかった。

光が全くない状態では、水溜まりの中を見る事もできない。

僕「……またね」




56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:19:26.76 ID:fJ2jl6pYO
真っ黒い地面にお別れの挨拶をして、僕は学校を後にした。

僕(……)

放課後に学校を探検した事。

噂の女の子に会って、会話をした事。

そして彼女の姿を見つけてしまった事。

僕(明日もまた会えるよね……ずっとあの場所にいるんだから)

しばらく歩き、遠くの道から僕はベランダを見つめた。

彼女がいる場所に向かって、大きく手を振った。


『うん。また……ね』

ベランダでは、少女が小さく手を振っている。

僕は背中に何も感じないまま、家までの道を走っていった。



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:33:12.02 ID:fJ2jl6pYO
翌日の放課後。

僕「ねえ女ちゃん」

女「ん、どうしたの〜?」

僕「今日は七不思議の調査しないの?」

女「……あんまり新しい噂がなくてさ〜。体育館だって授業の時調べたけど、別に何もなかったし」

僕「へへっ、じゃあ僕が一つ教えてあげるよ」

女「え?」

僕「一つ、不思議が見える場所を知ってるんだ!」



59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:33:24.18 ID:wDPipLSS0
なんかなける。てかこれ続く?結構楽しみなんだか


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:38:27.20 ID:fJ2jl6pYO
女「……ここ?」

僕は彼女を、昨日の水溜まりがあった辺りまで連れてきていた。

今朝は晴天だったせいか、水溜まりは無く地面が少し湿っている……くらいの印象だ。

女「……本当に、ここでその子と話せるの?」

僕「うん。昨日話したもの」

女「で、肝心のその子はどこにいるの?」

僕「ん……えっと」

僕は水溜まりのあった場所を指差した。

僕「昨日はここにいたよ」



62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:43:27.74 ID:y3ZdiGQZ0
つかまえての人か
今回も楽しみにしてる



63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:43:51.07 ID:fJ2jl6pYO
女「ここにいたって……地面から出てきたの?」

僕「違うよ、水溜まりの中にいるの。本当は三年生のベランダにいるんだけど……」

女「えっ、私たちの教室の所?」

彼女は、二階のベランダをパッと見つめた。

僕もその動きに釣られて同じ場所を見た。

でも、そこは昨日と同じで何も見えなかった。

女「……いないじゃん」

僕「だから、昨日は水溜まりの中で……あれ?」

一晩あけて頭の整理が出来ていないのか……うまく、説明が出来ない。

僕(他の人にわかるように説明するのって、難しい……)



64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:48:06.73 ID:fJ2jl6pYO
僕「あ、そ、そうだ」

思い出したように、僕は水溜まりのあった場所に話しかけてみた。

僕「ね、ねえ。来たよ、こんにちは」

……。

昨日聞こえた声は返ってこない。

僕「あ、あれ?」

女「もう、協力してくれるのは嬉しいけどさ。あんまり変な噂は流しちゃダメだよ〜」

あはは〜と、彼女は軽く笑っている。

僕「べ、別にそういうつもりじゃないよ」

しかし、声が聞こえない以上はただのイタズラになってしまう。



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 16:57:24.60 ID:fJ2jl6pYO
女「ふふっ、優しいね僕ちゃんは。そんなに気にしないでいいのに」

僕「でも……」

本当に彼女はいるんだ。

女「大丈夫だよ、不思議が見つからなくても新聞は作れるんだからさ」

僕「……」

結局、その後も声をかけてみたけれど反応はなかった。

あの女の子は、ずっと同じ場所にいると言ったのに。

たまたま、あの場所から離れていたんだろうか。

それとも今日は話したくない気分だったのだろうか。


僕たちが帰路についたのは、ちょうど夕空に一番星が光った頃の時間だった。



69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 18:25:36.88 ID:xJMl0LRD0



71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 18:57:11.78 ID:q798NYZ90
>>1をまっていた!
これでクリスマスもかつる!



72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:36:25.54 ID:LF+obaG10
ええいまだか


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:38:07.57 ID:fJ2jl6pYO
僕「ね、ねえどこいくの?」

女「いいからついてきて〜」

学校を後にした僕たちは、もう夜になりそうな帰り道を歩いていた。

僕が、付き合わせたお詫びに近くの駄菓子屋で何か奢るよ、と言ったら……。


女「……あ、それだったらついてきてよ」

僕(言われるままについてきたけれども)



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:43:27.24 ID:fJ2jl6pYO
僕はいつもと違う道を通って、家に向かって歩いている。

狭い路地や、竹林に囲まれた敷地の横を抜けて……彼女の後ろにくっついていた。

僕(方角は合ってるけど、ちょっと回り道だよ……)

女「あ、ほらついたよ、ここ」

狭い道を抜けると、車が走る大通りに出た。

僕「ここって、コンビニ?」

女「そうだよ。私、ここで食べたい物があるんだ」



76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:44:02.10 ID:+3Xj03jd0



77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:49:03.49 ID:fJ2jl6pYO
お店に入ると……真っ白な電気とヒーターの匂いが僕たちを包んだ。

僕「あったかい」

女「あ、僕ちゃんお金いくら持ってる?」

僕「んと、50円」

もともとは駄菓子屋で使う予定だったお金だ、コンビニで買い物をするには少し頼りない。

女「ふふっ、よかったちょうど、それくらいで」

彼女的には都合がいいらしい。

女「すいません、肉まん一つ下さい〜」

レジの前で、彼女は中華まんの入っているケースを指差して言った。

僕「……食べたいのって肉まんだったんだ」



78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:54:50.21 ID:fJ2jl6pYO
お金を半分づつ払った僕たちは、コンビニの外でさっき買った肉まんを分けあった。

女「はい、半分あげる」

僕「あ、ありがとう……」

美味しそうな湯気が出ている。

冷めないうちに口に運んでしまおうと、僕は肉まんにかぶり付いた。

僕「ぱく……美味し」

女「ふふっ、温かくて美味しいね〜」

僕「これが食べたい物?」

女「そうだよ、冬はこういう食べ物の方が幸せになれる気がする」

二口、三口で半分の肉まんはどんどん小さくなっていく。

温かいけれど、男の子の僕には少し足りない量だった。



79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 19:58:41.13 ID:fJ2jl6pYO
女「ごちそうさま」

僕「……ごちそうさま」

ゴミを捨てて、僕と彼女は向き合う形になった。

そろそろお別れの時間だ。

僕「肉まん、ありがとうね」

なぜかお礼を言ってしまう。

女「うん、美味しかったよ!」

お腹がふくれたせいか、彼女は元気に返事をした。

僕は、少しだけ水溜まりの中の少女の事を考えた。

僕(あの子も温かい物は好きなのかな……)

次にあったら聞いてみよう。

女「じゃあ、またね」

僕「うん、バイバイ」



80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/23(木) 20:04:34.83 ID:fJ2jl6pYO
『えっ、好きな食べ物?』

次に彼女に会えたのは、12月に入ってすぐの辺りだった。

校庭を歩いていると、久しぶりな声が聞こえてきて……。

この日も雨が降っていた。

水溜まりの中には、変わらない様子の彼女が見えた。

僕「うん、何が好きかなって思って」

『……あんまり覚えてないや。最近ご飯だって食べないし』

僕「そう、なんだ」

『うん……』

帰りのコンビニ思い付いた、この話題はあまり良くなかったらしい。

水の中の彼女が、ちょっとふて腐れた様子で手すりにもたれ掛かっている。



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